アトリエ−M ポップアート 創作の秘密 アンディ・ウォホールの場合 |
アンディ・ウォホール(1928〜1987年 ポップアーティスト)は、友人になにをやりたいのだと聞かれ”マティスになりたい”といっている。マティスのような作品を創ると言うことではなくマティスのように有名になりたいと言うことなのだ。そのころアンディ・ウォホールのまわりでも知人ロイ・リキテンシュタインやジャスパー・ジョ−ンズ達がポップな新しい動きをはじめようとしていた。彼もまた模索していて ”アイデアはないか? スキャンダラスで有名になるような何か?”そこであるとき破産しかけの画廊をかかえていたミュリエル・レイトウに相談を持ちかけた。 ”何か新しいアイデアはないか?” ”アイデアはあるけど幾らか払うなら” と彼女はアンディ・ウォホールに答えた。 アンディ・ウォホールは ”いくら?” とたずね ”50ドル” と彼女が答えると、すぐに机に行き小切手を書いて渡した。 ”いいわじゃ〜あなたが今一番好きなものは何なの?”、 ”何だろう”、 ”お金よ、お金を描くのよ、誰でもが必要として、好きなお金をそっくりそのまま描くのよ、他の誰もそんなもの描こうなんて想っていないわよ”、 そしてその後レイトウは”誰でも見慣れていて気にしないようなものたとえば「キャンベル・スープ缶」なんかをそのまま描くのよ”とも言っている。 そうしてアンディ・ウォホールは彼女からアイデアを買い取り ”ドル紙幣”、”キャンベル・スープ缶” を冷たく、正確に客観的に描くことを始めるのだ。 アンディ・ウォホールは言っているが、”何処からインスピレーションを得るんだって? そりゃあ知人との会話の中、テレビ、新聞、雑誌の中にアイデアを見つけだすんだ・・・” そしてアンディ・ウォホールの独自のスタイルを造りあげてゆくのだ。最初は手で描いていたがやがてシルク・スクリーンを使い始めることにより、より冷たく正確、無性格な作品を作り出してゆくのだ。 彼の”キャンベル・スープ缶シリーズ”の最初の個展はロサンゼルスの画廊で1962年に行われ、すさまじいひやかしがあびせられ、スキャンダルになり、その後ニューヨークの画廊での個展は大成功をおさめた。”絵画から創造性を排除したような即物的な表面的な(裏に何もない)作品、 絵画の最下位のラインをも飛び越え落としたあまりにひどすぎる、だからすばらしい” なのだ・・・ 60年代後期になるとアンディ・ウォホールは上流階級の仲間入りし、有名人達のポートレートを描くような肖像画家として仕えていると言うような批判をされるようになるが、本人自身もますます有名になり、パーティに明け暮れるような生活を送る・・・ また1968年ヴァレリー・ソラナスにより狙撃され重傷を負うが、71年ローリングストーンズ”スティッキー・フィンガーズ”アルバムカバー制作(ジーンズを剥いた下腹部の写真に本物のファスナー付けたヤツ・・・昔になるがこういうのがポップなんだなと想った)、有名人達のポートレート制作、パンク・グラフィックの予見的な作品制作等20年以上もの間ポップアーティストとして活動したのはすごい。 ポップアートという表現は1956年抽象表現主義が終わろうとしている頃それにに反発するような展覧会がイギリスで行われ、テーマがロリポップ、コミック・ブック、ボディビルの広告、趣味の悪い家具・・・抽象表現主義者たちが、忌み嫌い無視したものばかりで、構成されたこの新しいアートで美術評論家のローレンス・アロウェイが初めてポップアートと言う言葉を使った。 ---- アンディ・ウォホール と Velvet Underground と Lou Reed と David Bowie ---- ルー・リードがヴェルヴェット・アンダーグラウンドでニューヨークを中心に実験音楽、ノイジーな音楽をやっていた頃にアンディ・ウォホールに見出され、プロデュースで、1967年デビューした。アルバムカバーもバナナそのものを描いたアンディ・ウォホールのポップな制作だ。その後ローリングストーンズのアルバムカバーも制作している。”Scene From The Life of Andy Warhol”ビデオを観るとヴェルヴェット・アンダーグラウンドの演奏会場にアンディ・ウォホールとアレン・ギンスバーグが一緒に写っている。 ルー・リードにあなたとアンディ・ウォーホルとの関わりについて聞かれ以下のように語っている。 「彼に初めて会ったのはヴィレッジのクラブに出演していた時だった。僕たちがそこの契約が切れる前の晩に友達がウォーホルを連れてきてくれたんだ。彼は、映画館で一週間の仕事がある、自分は映画を映すからその前で好きなように演奏してくれればいい、君達をライトで演出するけどどうか、と言った。そして僕が承知したこれがきっかけだ。彼が僕の音楽に影響を与えたかって? さあ、それは良く分からない。少なくともVUの最初のアルバムに入っている曲は彼に出会う前に書いたものだ。その後、曲の題材に関してアドバイスしてくれた。彼がパラノイア(偏執狂)について書いたらどうかと言うから。僕はパラノイアの曲を書いた。」 ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを脱退したルー・リードにネルソン・オルグレンによる1956年作の演劇版”A Walk On The Wild Side”への音楽の提供だった。それで”Walk On The Wild Side”を作成する。ファクトリに出入りしていたアンディ・ウォホールとの付き合いから知り合った美しい男、女、同性愛者達へのトリビュートである。ルー・リードはこの頃のことを以下のように語っている。 ”雇われて誰か他の人のために、その人の視点から曲を書くことは俺好みの仕事だったよ”またその頃の作品”Vicious”はアンディ・ウォホールからの注文だった。彼が言ってきたんだよ”Viciousって曲書いてみたら”って。それで”でもアンディ"Vicious"っていってもどういう?”と聞くと、彼は”花で人をぶつとか”って言ったんだ。そうしてアンディの示唆により曲が出来上がって”これはどいう意味ですか?”と聞かれると、”アンディに聞いてくれとは、さすがに言えなかったヨ”。 Walk On The Wild Side, Coney Island Baby等は好きで今でも聞いている。 アンディ・ウォホールが亡くなったときルー・リードは、VUで一緒に演っていたジョン・ケールと二人で彼に捧げるアルバム”Songs For Dorella”を創っている。またアルバム”New York”でも彼に捧げる曲を創っている。 またデビッド・ボーイが”Andy Warhol”曲を創り(’71)アンディ・ウォホールの前で演奏した時、聞き終えると何も言わずその場を出てゆき、その後、デビッド・ボーイのはいていた靴(マーク・ボランからの贈り物だった)に関心を持ち、靴の話ばかりして写真を撮っていたという。アンディ・ウォホールの性格をよく表している話ではないか? The Definitive Collection - Lou Reed のライナーノーツの一部を参照 (ルー・リードの発言部分) ---- アンディ・ウォホール と Velvet Underground と Nico --- アンディ・ウォホール と Velvet Undergroundとの関わりについてもう少し・・・ ヴェルヴェット・アンダーグラウンドがアンダーグラウンド・シーンで演ってた頃アンディ・ウォホールも実験的映画でロックグループを探していたし、友人に紹介され、気に入り彼のサポートでファースト・アルバム"The Velvet UnderGround&NICO"を出したのは1967年のことだ。そのアルバムの中でボーカルを取っている女性Nicoについて・・・彼女はドイツ出身で美しさとスタイルの良さからファッションモデルをやっていて、”ヴォーグ”、”エル”のファッション誌を飾るようになり、フェリーニの映画などにも出ていた。 音楽、役者を目指していてアルバムを出すも全く売れず、役者を演るためニューヨークに行き、アンディ・ウォーホルのファクトリーに出入りするようになった。彼女もまたWalk On The Wild Sideの一人で、美しかったのでアンディ・ウォホールのフィルム”チェルシー・ガールズ”に役者として出演している。そして彼の薦めによりヴェルヴェット・アンダーグラウンドに加わり、ファースト・アルバムもアルバムカバーをアンディ・ウォーホルが描いたバナナそのもののポップなものでタイトルも"The Velvet UnderGround&NICO"としてその中で3曲ボーカルを取っている。"All Tomorrow's Parties"は若い彼女の魅力的な声、メロディも良い。Nicoはヴェルヴェット・アンダーグラウンドの他のメンバーとの間で確執が生じファースト・アルバムだけでグループを抜け、独特の雰囲気を持った作品を創っていく。1985年制作彼女の最後のアルバム”Camera Obscure”を聞いた。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルがプロデュースしていて、サウンド、彼女のしゃがれ声で退廃的で悲しげそしておどろおどろした雰囲気等とても良い。 ---- ルー・リード”ANIMAL SERENADE”に関して ---- 2003年に”NYC MAN TOUR”ライブツアーを行っていてその内のLAでのライブを収めた”ANIMAL SERENADE”を聴いた。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代の曲からRavenまでの作品23曲を演っている。気怠くて、退廃的な雰囲気が好きだ。ルー・リードは、アンディ・ウォホールと知り合ってVUのファースト・アルバムを出してから35年以上もロックミュージックに関わっており、”ANIMAL SERENADE”を聴いてその音質が殆ど変わっていないことに驚かされた。ルー・リードの声も、楽曲も全然古さを感じないのだ。 ・Small Town ・Tell it to your heart ・Vanishing Act ・Street Hassle ・Revien Cheries ・Venus in Furs ・Sunday Morning ・The Raven などとても良い。(Coney Island Baby, Walk on the wild sideなどとても好きな曲だが演っていない・・・) |